ブログ
成績を上げる処方箋【英語学習法】「英語を英語のまま理解する」は可能か
今回のブログは『英語を英語のまま理解する』事が日本語を母国語にするものに取って可能かどうかという事を考えてみたいと思います。
私たち日本人は日本語を読んだり、話したり、聞いたりする時100%文法は意識していません。考えた事がそのまま口をついて出ているはずです。
同様の事が英語で出来れば、英語学習者にとって理想であり最終形です。
しかしこの道が一筋縄ではいかない事は一度でも英語を学習した方にはお分かりになっていると思います。
でもテレビ等でバイリンガルの人を見ると羨ましく、自分もそうなりたいと思った事は一度ではないのではないでしょうか。
それでははたして日本語を母国語にするものがバイリンガルになる可能性はあるのでしょうか。
結論を先にお伝えすると実は、日本で生活をしながら日本語を母国語にして、かなりバイリンガルに近い状態に持っていく事は可能です。そしてこの方法を実際に試している人はいます。
その方法をここでご紹介しましょう。
それは、幼稚園児の頃にネイティブと一緒に生活させるというものです。どれくらい一緒にいると効果があるのかは正確には分っていませんが、だいたい『35時間/週以上ネイティブと生活する』とバイリンガルになる可能性があると言われています。平日5日間利用したとすると1日当たり7時間です。これは一つの目安と考えていいようです。なぜなら、私が見てきた生徒の中にこの方法でバイリンガルに近くなった生徒は実際にいました。但し、ここははっきり認識して頂のですが、バイリンガルに近くなったのはリスニング能力だけです。リスニング能力だけはトレーニングを受けていない一般の生徒に比べると格段に高かったのですが、トレーニングを受けた幼稚園児の時期では言語能力が整っていないため、リーディングとライティングについては一般の生徒とそれほど変わりませんでした。残るスピーキング力も残念ながら際立ってはいませんでした。英検でのスピーキングテストの得点は平均を少し超えるぐらいでした。
しかしこんな事を言っていました。
「先生が発音や読み違えをするとすぐに分った」
つまり、リスニング力は際立っていたという事だと思います。
それでは肝心の学校での英語の点数はどうかというと、残念ながら「4」評価でなかなか「5」を取れませんでした。学校の英語で高得点を出すために求められる能力は依然として「英語を日本語に正確に訳す」であり、そのためのテストとしては英文法を基本にした「文法問題」、そして古典的な出題方式である「語句の並べ替え」「整序問題」という事になります。
英語を英語のまま理解出来たかどうかは実際にはテストでは計りようがなく、あえて言えば英文を読ませて英語で感想文を書かせれば良いのですがこれは中学生には、というより高校生を含めた日本の全ての英語学習者に取って敷居が高すぎます。また、採点も非常に厄介です。記述内容を重視して採点するのか、記述されている文章を文法力を基準に採点する、のかで得点は全く変わってしまいます。因に、現在の英検の英作文の採点を見ると明らかに「記述内容重視」の傾向です。
従って、結論を言えばリスニング能力をネイティブ並みにのばす事は可能だが、それ以外のリーディング、ライティング、スピーキング力は、幼稚園児時代にネイティブと生活させてもネイティブ並みの力を養う事は難しいという事になります。
しかし、中学生になってから英語を学習した人たちのグループに比べるとリスニングでアドバンテージを持っている分上達は早く、発揮出来る能力も高くなる可能性は秘めています。それは他の生徒同様中学以降どれだけ努力をしたかにかかってくると言えます。
また、この生徒の事例から読み取れる一つの教訓を皆さんにお伝えしておきたいと思います。
それは英語の能力が高いという事は英語の言語能力が高い事に他なりません。しかし、英語だけの言語能力を高めようとしてもそれは難しいという事です。
以前「語学の天才ピーター・フランクルに学ぶ」のブログでも伝えした様に、彼が12カ国語を習得する過程で実践したのは次の6つでした。
- 単語は自分の単語帳を作って覚える。
- 単語は発音を耳で聞いて覚える。
- 覚えたらすぐ使ってみる。
- ネイティブとコミュニケーションをとる。
- 基本文法を覚えたら、例文を丸ごと暗記する。
- しっかりした母国語を磨くことが一番大事。
ここで最も意識していただきたい項目は「6.しっかりした母国語を磨くことが一番大事。」です。
私たちが日本人である限り、言語能力は日本語で磨く必要があります。そこで得た言語能力がベースになって外国語の言語能力も伸びていきます。
日本語での読書を通じた言語能力が英語の能力伸長の鍵を握っている事は決して忘れない様にして下さい。