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脳を鍛える一つの方法【書き写し】
昔から書写は学習方法の一つとして取り入れられてきました。
古くは<写経>です。
先日京都の瑠璃光院に紅葉を見に行った際、お寺の中に<写経>をするスペースが設けられていて、大勢の方が<写経>に勤しんでおられました。
学校のない時代お寺は古くから、一般の方々に年に数度<写経>をする場所を提供ていました。<写経>をすることで、一般の方々に漢字やお経の教えを広めていたのだと思います。
又<写経>することが脳にも良い事が最近の研究で分かってきています。古の人たちは経験的に<写経>の効果を理解して、それを生活に取り入れていたのでしょう。
この写経効果を積極的に取り入れることで脳が活性化すると提唱しているのが「脳を鍛える大人のドリル」と「脳を鍛える大人の音読ドリル」シリーズで有名な川島教授です。
川島教授は「天声人語」を書き写すことで脳が活性化するとして、写経=書き写しを積極的に学習にとりいれる事を提唱しています。
以下川島教授のエッセイの抜粋です。
『「書き写し」は脳にいい』
脳を鍛えるには、「作動記憶」と呼ばれる短期の記憶を鍛えることでが効果的だとわかっています。
「作動記憶」とは、頭に入れた情報を操作して、加工して、行動につなげる役割を担っている記憶の一種です。
「書き写し」は、文章を見て、ある程度のかたまりを理解して、記憶して、それを書く作業の繰り返しです。つまり「書き写し」は「作動記憶」の訓練そのものと言えます。
「書き写し」の作業は「作動記憶」の訓練になり、結果として脳を鍛えることになります。
『「作動記憶」を鍛えるとどんないいことがあるのか』
「作動記憶」を鍛えると、学習したり、行動したりする時に、たくさんの情報を脳にとどめられるようになります。
様々な作戦を頭の中に思いつくので、勉強でも、スポーツでも、遊びでも、より豊かに、よりスムースにできる様になると予想できます。
『「作動記憶」鍛える学習法はどの様なものか』
「作動記憶」の訓練は自分でできる「ぎりぎりの難しさ」で続けることがポイントです。
「書き写し」をする時、徐々に書き写す単語、文章の量を増やすよう意識してください。
最初はチョット見ては写して、になるでしょうが、そのうち一行覚えられ、次は二行覚えられというように徐々に増えていくはずです。
覚えて正しく書くという事が大切な課題です。
『「ぎりぎりの難しさ」とはどんなものだろうか』
自分ができるぎりぎりの負荷という事になります。
これは教育の基本になります。
楽なところに留まっていてはそれ以上能力は伸びません。
ぎりぎりは能力を伸ばす最大のコツという事になります。
覚える量を増やすことが大切で、早く書くことは意識しなくても大丈夫です。
しかし、難しすぎると心が折れてしまいます。
ここを意識して取り組んでほしいと思います。
ぎりぎりとは普通にできる量の110%(普通にできる量の10%アップ)を意味すると思ってください。
『そもそもなぜ脳を鍛える必要があるのか』
脳も体もいろんな方向でたくさん使って潜在能力を上げることが教育や発達をささえる基本です。
脳は使えば使うほどいい。
また「作動記憶」のトレーニングを「ぎりぎりの難しさ」で続けることによって、様々な能力が伸びることが確かめられています。
大学生の実験では「一般的な知能が伸びる」「創造力が伸びる」ことが分かっています。
脳科学的な検証で、このトレーニングにより大脳の前頭前野の皮質の体積が増えることも分かっています。
つまり脳が大きくなるわけです。
『子供たちの発達、教育について』
子供たちの発達、教育を考えた時、楽で便利な社会にも子供たちを泳がせるのがほんとにいい事なのでしょうか。
私は常日頃子供たちに言います、勉強ってすごくいい漢字だねと・・。
勉強は楽しく学ぶではなく「強いて勉(つと)める」と書く通り、ある意味半べそをかきながら、自分の限界にチャレンジする事であると。
そこに勉強の本質があると思うのです。
古(いにしえ)の写経もこの川島教授の提唱する「作業記憶」のトレーニングだったのです。
古来より日本人は生活にこの様な学習法を取り入れてきたのですね。
古(いにしえ)の日本人、素晴らしい。